高知市・築40年切妻の和型スレート|下り鬼瓦が落ちた原因は「鬼瓦を引っ張る線」の切れ?棟を一部撤去して太い線で留め直すご提案
- 代表村山の現場ブログ
皆さんこんにちは。村山瓦の村山です。
今回は高知市のお客様から「鬼瓦(おにがわら)が落ちているので見てほしい」とお電話をいただき、屋根の調査に伺ったときのお話です。
「鬼瓦が落ちた」というご相談は、私たちの中では最優先で動く案件です。鬼瓦は棟の端に据わっている大きな瓦で、1つで数kg〜10kg以上あるものも珍しくありません。それが屋根の端、しかも軒先に近い位置から落ちてくるわけですから、もし人の上や車の上に落ちたらと思うと、本当にゾッとします。
実際に屋根に上がってみると、鬼瓦が落ちた「本当の原因」は、外からは見えない鬼瓦を裏から引っ張っている“線”にありました。築30〜40年の瓦屋根にお住まいの方には、ぜひ知っておいていただきたい内容です。
今回の屋根の状態(高知市・築約40年・切妻)
まずは調査で分かった屋根の概要です。
| 所在地 | 高知県高知市 |
|---|---|
| 築年数 | 約40年 |
| 屋根の形 | 切妻屋根 |
| 屋根材 | 和型スレート(セメント系の和型瓦) |
| 症状のあった部位 | 下り棟の先端にある「下り鬼瓦」、のし瓦、丸瓦 |
| ご相談内容 | 鬼瓦が落ちているので見てほしい |
「和型スレート」は、見た目は日本瓦(粘土瓦)とよく似ていますが、セメントを主な原料にプレスして作られた屋根材です。高知でも昭和40〜50年代の住宅によく使われていて、私たちが点検に伺う築30〜40年のお宅でも本当によく見かけます。
切妻屋根は、本を開いて伏せたような山型の屋根です。てっぺんの水平な大棟のほかに、お家によっては妻側(けらば側)に沿って斜めに下りてくる下り棟(降り棟)が付いています。その下り棟の先端、軒先側に据えられているのが今回の「下り鬼瓦」です。
下り鬼瓦は、大棟の鬼瓦よりも低い位置にあり、しかも屋根の傾斜の途中で前へ前へと引っ張られる力がかかる場所にあります。ここが今回のポイントになります。
屋根に上がって分かった3つの症状
地上からは「鬼瓦が1つ無くなっている」ということしか分かりませんでしたが、近くで確認すると次の3つの症状が重なっていました。
① 下り鬼瓦を支えている線が切れていた
鬼瓦は、ただ棟の端に置いてあるわけではありません。鬼瓦の裏側から線を通し、その線を棟の内部や屋根の下地側に結んで「後ろから引っ張って」留めています。
今回は、この鬼瓦を引っ張っていた線がプツンと切れていました。支えを失った鬼瓦は、屋根の勾配に沿って前へずり落ち、そのまま下へ落ちてしまったと考えられます。
⚠ 現場の実感
鬼瓦が落ちたお宅を何件も見てきましたが、「鬼瓦そのものが割れて落ちた」というケースより、「鬼瓦を留めている線が切れた・緩んだ」ケースのほうが圧倒的に多いです。鬼瓦は焼き物や厚みのある材料なので丈夫ですが、それを支える線は40年も経てば確実に弱っています。
② のし瓦が落ちかかっていた
鬼瓦のすぐ後ろには、棟を形づくるのし瓦が何段か積まれています。鬼瓦は、このいちばん先端ののし瓦の「押さえ」の役目もしていました。
その鬼瓦が無くなったことで、先端ののし瓦は前側の支えを失い、今にも滑り落ちそうな状態になっていました。中の葺き土も年数が経ってボソボソになっており、のし瓦をつなぎ留める力はほとんど残っていませんでした。

③ 丸瓦も落ちかかっていた
のし瓦の上に被さっている丸瓦(冠瓦)も同じです。のし瓦が前に動けば、上の丸瓦も一緒に引っ張られます。触るとグラグラしていて、次の強風や台風で落ちてもおかしくない状態でした。
つまり、鬼瓦1つが落ちたことをきっかけに、下り棟の先端部分全体が崩れかけていたわけです。「鬼瓦が1枚落ちただけ」と思っていても、その後ろでは次の落下が待っている、というのが今回の怖いところです。
なぜ下り鬼瓦は落ちてしまったのか
現場で見た状態から、次のような流れで進んだと考えています。
- 線の経年劣化:40年近く雨風や寒暖差にさらされ、鬼瓦を引っ張る線が少しずつ細り、弱っていく
- 葺き土の痩せ:棟の中の葺き土が雨水を吸っては乾くを繰り返し、ボソボソになって鬼瓦やのし瓦を支える力が落ちる
- 線への負担の集中:土の支えがなくなった分、鬼瓦の重さを「線1本」で受け止めるようになる
- 線が切れて落下:強風や地震の揺れをきっかけに線が切れ、鬼瓦が前へずり落ちる
- のし瓦・丸瓦の崩れ:前側の押さえを失ったのし瓦と丸瓦が、続けて落ちかかる
特に下り鬼瓦は、屋根の傾斜の途中にあるため、重さがそのまま「前へ滑り落ちる力」としてかかり続けます。大棟の鬼瓦以上に、裏から引っ張る線への負担が大きい場所なんです。
また、高知は雨の量が多く、台風の通り道でもあります。横殴りの雨で棟の中に水が入りやすく、強い風で鬼瓦が揺さぶられる回数も多い。線や葺き土の傷みが進むスピードは、全国的に見ても早い地域だと現場で感じています。
これは当時の職人さんの腕が悪かったという話ではありません。40年前はこの留め方が標準的な工法だったということです。ただ、どんな材料にも寿命があり、40年という年月はちょうどその寿命を迎える時期だということです。
ご提案:棟を一部撤去し、鬼瓦を引っ張る線を太いものに替えて元に戻す
今回のお客様には、下り棟の鬼瓦まわりを一部撤去し、鬼瓦を引っ張る線を太く丈夫なものに替えて、棟を元の形に戻す補修をご提案しました。
屋根全体を見ると、平らな部分(平部)の和型スレートには大きな割れやズレは見られませんでした。傷みが集中しているのは下り棟の先端部分なので、悪いところを根本から直し、まだ使える部分はそのまま活かすのが、費用と効果のバランスがいちばん良いと判断しました。
補修の流れ(今回の想定)
- 棟の一部撤去:落ちかかった丸瓦・のし瓦を、鬼瓦まわりの必要な範囲だけ丁寧に取り外します
- 中の状態確認と清掃:痩せた葺き土や切れた古い線を取り除き、下地の傷みがないかを確認します
- 新しい線の取り付け:鬼瓦を引っ張る線を太く丈夫なものに替え、しっかりと効く場所に留め直します
- 鬼瓦の据え直し:鬼瓦を元の位置に据え、新しい線で後ろから確実に引っ張って固定します
- 棟を元に戻す:のし瓦・丸瓦を積み直し、雨水に強い屋根用漆喰で仕上げます
この補修方法を選んだ3つの理由
① 落ちた原因そのものを直せる
今回の原因は「線が切れたこと」です。落ちた鬼瓦を拾って元に戻し、外から漆喰で塗り固めるだけでは、鬼瓦を後ろから引っ張る力は戻りません。いったん棟をめくって、中で線を付け替えることで、はじめて原因から直すことができます。
② 線を「太く」することで、次の40年に備える
同じ太さの線に替えるだけでは、また同じように弱っていく心配があります。線を太くすることで、鬼瓦の重さや風の揺さぶりに耐える余裕が大きくなります。下り鬼瓦のように前へ滑ろうとする力が常にかかる場所こそ、ここをケチってはいけないと考えています。
③ 棟を「一部」撤去にとどめることで、費用を抑えられる
棟を全部やり替える必要がない状態であれば、必要な範囲だけを撤去して直すことで、工事の範囲も費用も最小限に抑えられます。まだ使える瓦はできるだけ再利用し、無駄な工事はおすすめしないのが村山瓦の考え方です。
💡 ポイント
鬼瓦の補修で大事なのは「見た目を戻すこと」ではなく、「鬼瓦を何で、どこに、どれだけしっかり引っ張っているか」です。外から見えない部分だからこそ、屋根に上がってめくって確かめる必要があります。
【専門知識】鬼瓦の固定方法と瓦屋根の新しい基準
ここからは少し専門的なお話です。
鬼瓦は「棟の端の雨仕舞い」も担う大事な瓦
鬼瓦は「魔除け」の飾りとしてのイメージが強いですが、本来の役割は棟の端をふさいで、雨水が棟の中に入り込むのを防ぐことです。鬼瓦が外れてしまうと、棟の断面がむき出しになり、そこから雨水が入って葺き土がさらに流れ出します。放っておくと、棟の崩れが内側へどんどん広がり、雨漏りにつながることもあります。
固定の強さは「線<釘<ビス」
瓦屋根の固定方法は、昔ながらの銅線や鉄線で縛る方法から、釘、そしてビス(ねじ)で留める方法へと変わってきました。国の資料でも、固定の強さは「銅線・鉄線よりも釘、釘よりもねじ」の順に高いと整理されています。
大きな地震や台風のたびに瓦屋根の被害が集中したのは、平らな部分よりも棟や端部でした。土の接着力と線だけで留めていた旧来の棟は、年数とともに固定力が落ちやすいためです。
2022年から新築の瓦屋根は「すべての瓦の固定」が義務に
こうした被害の経験から、令和4年(2022年)1月から、新築や屋根の葺き替えの際には、軒・けらば・棟・平部の「すべての瓦」を固定することが義務化されました。棟については、ねじで固定することが求められています。
一方で、それより前に建てられたお家の多くは、今回のように線で鬼瓦や棟を留めている旧工法のままです。築30〜40年のお家は「今すぐ全部やり替えなければいけない」というわけではありませんが、線や土が寿命を迎える時期に入っていることは知っておいていただきたいと思います。
| 比較項目 | 今回の既存の状態 | 今回のご提案 |
|---|---|---|
| 鬼瓦の固定 | 細い線で後ろから引っ張る(経年で切断) | 太い線に付け替え、効く場所へ留め直す |
| のし瓦・丸瓦 | 葺き土が痩せて落ちかかり | いったん外して積み直し |
| 棟の仕上げ | 葺き土が劣化 | 雨水に強い屋根用漆喰で仕上げ |
| 工事範囲 | ― | 傷んだ鬼瓦まわりの一部撤去のみ |
※屋根の状態や形によって、最適な補修方法は変わります。棟全体の傷みが進んでいる場合は、棟全体の積み直しや、ビス固定を取り入れた工法をご提案することもあります。必ず実際の屋根を見たうえで判断しています。
地上からできる鬼瓦・棟のセルフチェック
築30〜40年ほどの瓦屋根・和型スレート屋根にお住まいの方は、次のような点を地上から見てみてください。
- ☐ 鬼瓦が前に傾いている、うつむいているように見える
- ☐ 鬼瓦と棟の間に隙間ができている
- ☐ 棟の先端ののし瓦や丸瓦がズレている、段差がある
- ☐ 庭や雨どい、ベランダに瓦のかけらや茶色い土が落ちている
- ☐ 台風や強風のあと、屋根の見た目が変わった気がする
- ☐ 建ててから一度も棟や鬼瓦を直したことがない
⚠ ご注意ください
屋根に上がるのは大変危険です。線が切れかけた鬼瓦や、ぐらついた棟瓦は、少し触れただけで落ちることがあります。確認は必ず地上から、双眼鏡やスマートフォンのズーム機能で見える範囲にとどめてください。また、鬼瓦が傾いているお家では、真下を通る動線や駐車スペースにはしばらく近づかないようにしてください。
特に「鬼瓦が前に傾いている」のは、裏の線が切れかけている・緩んでいるサインのことが多く、落ちる一歩手前の状態です。ひとつでも当てはまれば、台風シーズンが来る前に一度点検を受けておくと安心です。
よくあるご質問
Q. 落ちた鬼瓦を元の場所に戻して、漆喰で固めてもらえば直りますか?
A. 一時的に見た目は戻りますが、おすすめしていません。鬼瓦が落ちた原因は「後ろから引っ張る線が切れたこと」なので、漆喰で表面を固めても、鬼瓦を支える力は戻らないためです。棟を必要な範囲だけめくり、線を付け替えて留め直すことが大切です。
Q. 落ちた鬼瓦が割れてしまいました。同じものは手に入りますか?
A. 割れや欠けがなければ、そのまま再利用できることが多いです。割れてしまった場合は、形や大きさが近いものを探したり、状態によっては鬼瓦をつくる職人さん(鬼師)にお願いしたりすることもあります。まずは現物を拝見してご相談させてください。
Q. 屋根全体を葺き替えないといけませんか?
A. 今回のように傷みが下り棟の先端に集中している場合は、部分的な補修で十分なケースが多いです。ただし、和型スレートは築年数とともに表面の劣化や割れが進む屋根材でもあります。屋根面全体の状態も合わせて確認し、補修でいくのか、将来的に葺き替えを考えたほうがいいのかを、写真を見ていただきながらご説明します。
Q. 鬼瓦が落ちた場合、すぐに来てもらえますか?
A. 落下の危険がある場合は、できるだけ早く伺うようにしています。台風が近づいているときなどは、まず落ちかかった瓦の応急処置を行い、そのあとで本工事をご提案することもあります。まずはお電話でご相談ください。
Q. 台風で鬼瓦が落ちた場合、火災保険は使えますか?
A. 台風や強風などの自然災害が原因と認められる場合、火災保険の対象になることがあります。ただし、経年劣化だけが原因と判断されると対象外になることもあります。保険が使えるかどうかは保険会社の判断になりますが、申請に必要な写真の撮影などはご協力できますので、お気軽にご相談ください。
まとめ・無料点検のご案内
- 高知市・築約40年の切妻屋根(和型スレート)で、下り棟の先端の鬼瓦が落ちていた
- 原因は、鬼瓦を後ろから引っ張っていた線が経年で切れたこと
- 鬼瓦を失ったことで、のし瓦・丸瓦も前側の支えをなくし、落ちかかっていた
- 棟を一部撤去し、鬼瓦を引っ張る線を太いものに替えて、棟を元に戻す補修をご提案
- 築30〜40年の瓦屋根は、鬼瓦や棟を留めている線・土が寿命を迎える時期。傾きやズレが見えたら早めの点検を
「鬼瓦が1つ落ちただけ」という小さな出来事の裏に、今回のように棟全体の崩れにつながるサインが隠れていることはよくあります。私たちは、表面の症状だけで判断せず、屋根に上がって原因まで確かめることを大切にしています。
村山瓦では、屋根の点検を無料で行っています。点検の結果は写真でご説明し、必要のない工事をおすすめすることはありません。「うちの鬼瓦も傾いている気がする」と思われた方は、お気軽にご相談ください。
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