高知市・築50年切妻のいぶし瓦|下り棟から木が生えた!根っこまで取り除くために「下り棟の積み替え」と「化粧棟の撤去」をご提案した理由
- 代表村山の現場ブログ
皆さんこんにちは。村山瓦の村山です。
今回は高知市のお客様から「屋根から木が生えているので見てほしい」とご相談をいただき、調査に伺ったときのお話です。
「草ならともかく、木が生えるなんてことがあるの?」と驚かれる方も多いと思います。ところが、築年数の経った瓦屋根では決して珍しいことではありません。特に棟(むね)の中の葺き土(ふきつち)は、条件がそろうと植物にとって居心地のいい「植木鉢」になってしまうのです。
今回は、木を切るだけで終わらせず「下り棟の積み替え」と「化粧棟の全撤去」をご提案しました。なぜそこまでやる必要があるのか。現場で見たこと・考えたことをそのままお伝えします。
目次
今回の屋根の状態(高知市・築約50年・切妻・高知県産いぶし瓦)
まずは調査でわかった屋根の概要です。
| 所在地 | 高知県高知市 |
|---|---|
| 築年数 | 約50年 |
| 屋根の形 | 切妻屋根 |
| 屋根材 | 高知県産いぶし瓦(日本瓦) |
| ご相談内容 | 屋根から木が生えているので見てほしい |
| 主な症状 | 北側の下り棟から木が生えている/隣の化粧棟に雑草 |
屋根に上がって最初に感じたのは、「瓦そのものはまだまだ頑張っている」ということです。高知県産のいぶし瓦は、50年経っても銀色の落ち着いた風合いを保っていて、割れや大きな欠けもほとんど見当たりませんでした。いぶし瓦は焼き物ですから、きちんと納まってさえいれば非常に長持ちする屋根材です。
一方で、傷んでいたのは瓦ではなく「棟の中身」でした。屋根全体ではなく、症状が北側の棟に集中していたのが今回のポイントです。
下り棟から木が生えていた|根っこは棟の「下の方」に
切妻屋根の端、ケラバ側を軒先に向かって下りていく棟を「下り棟(くだりむね)」と呼びます。今回、木が生えていたのはこの下り棟でした。
地上からは「小さな草かな?」くらいに見えていたそうですが、近くで見ると幹がしっかり木質化していて、何年もかけて育ってきたことがわかります。鳥が実を食べて運んだ種か、風で飛んできた種が、棟の隙間から葺き土に落ちて芽を出したのだと思います。
気になったのは根っこの位置です。棟の隙間から確認すると、根は表面の漆喰あたりではなく、棟の下の方、のし瓦の奥の葺き土の中にまで伸びていました。
💡 現場のポイント
地上に見えている枝葉の大きさ=根の大きさではありません。棟の中は暗くて湿った土が詰まっているので、根は光を求めず「水と土」を求めて下へ下へと伸びます。見えている部分が小さくても、中では棟を内側から押し広げていることがあるのが、棟に生えた木の怖いところです。
幹を切ること自体はすぐにできます。ただ、根っこまで取り除こうとすると、下り棟を一度撤去してからでないと手が届かない状態でした。

隣の化粧棟にも雑草|原因は「北側の屋根」にありました
下り棟のすぐ隣にある化粧棟(けしょうむね)にも、雑草がびっしりと生えていました。化粧棟は屋根面の途中に設けられる、見た目を整える意味合いの強い棟です。高知の古い瓦屋根ではよく見かけます。
この屋根で植物が生えていたのは、どちらも北側の屋根面。ここに大きな理由があります。
- 日が当たりにくい:北側は一日を通して直射日光が少なく、雨のあとも濡れた状態が長く続きます。
- 葺き土が乾きにくい:棟の中の葺き土が一度水を含むと、なかなか乾きません。常に湿った土=植物にとって理想的な環境です。
- コケが先に生える:湿った面にはまずコケが付き、それが種を受け止める「受け皿」になって、草や木へと進んでいきます。
同じ屋根でも、南側の棟はほとんど草が生えていませんでした。屋根の傷み方は方角で大きく変わる。これは現場を見続けていると強く感じることです。高知は日差しが強い土地ですが、そのぶん北側との差がはっきり出やすいとも言えます。

「木を切るだけ」ではダメな理由
「とりあえず木を切ってもらえれば…」とお考えになるのは自然なことです。費用も手間も最小限ですみます。それでも私が切るだけをおすすめしなかったのは、次のような理由からです。
| 切るだけで終わらせた場合 | 屋根の中で起きること |
|---|---|
| ① 根が残る | 根の生命力が強い木だと、残った根から再び芽が出てくることがあります。 |
| ② 根が枯れて空洞ができる | 根が枯れて腐ると、そのぶん葺き土の中にすき間ができ、雨水の通り道になります。 |
| ③ 押し広げられた棟は戻らない | 根の力でズレたのし瓦や、崩れた葺き土は、木を切っても元の位置には戻りません。 |
| ④ 湿った葺き土はそのまま | 北側で乾きにくい環境は変わらないので、また種が入れば同じことの繰り返しになります。 |
つまり、木は「原因」というより「棟の中が傷んでいますよ」というサインなんです。木を切ってサインを消しても、棟の中の状態は良くなりません。除草剤も同じで、効いても毎年の作業になってしまいます。
瓦の下には防水シート(ルーフィング)があるので、棟から水が入ってもすぐに雨漏りするわけではありません。ただ築50年となると、その防水シートも年数が経っている可能性が高く、入った水を受け止めきれないことも考えておく必要があります。雨漏りしてからでは、棟だけでなく下地まで直すことになりかねません。
ご提案内容|化粧棟は全撤去、下り棟は積み替え
以上をふまえて、今回は次の内容をご提案しました。
化粧棟:全撤去
化粧棟は、屋根の雨仕舞い(雨水を処理する納まり)にとって必ずしも必要な棟ではありません。見た目のための棟であるぶん、棟がある=葺き土がある=植物や雨水のリスクがあるということでもあります。
今回のように北側で乾きにくく、すでに雑草が根を張っている状態なら、積み直すよりも思い切って撤去し、屋根面をすっきり納める方が、この先の屋根のためになると判断しました。リスクのある場所そのものを減らす、という考え方です。
下り棟:積み替え
下り棟は、ケラバや屋根の端を雨風から守る大事な棟なので、撤去するわけにはいきません。そこで一度解体して根っこを完全に取り除き、傷んだ葺き土を入れ替えて積み直す「積み替え」をご提案しました。
いぶし瓦自体はまだしっかりしているので、使えるのし瓦や冠瓦はできる限り再利用します。50年かけて馴染んだいぶし瓦の色合いをそのまま残せるのも、積み替えの良いところです。
💡 なぜ「部分補修」ではなく「積み替え」なのか
表面の漆喰だけを塗り直す方法もありますが、中の葺き土が湿って崩れている状態では、上から塗っても数年で同じ症状が出てしまいます。根本から直すには、一度ばらして中を作り直すしかない。今回は根っこが棟の下の方にあったので、なおさらでした。
下り棟積み替えの工事の流れ
- 棟瓦の取り外し
冠瓦・のし瓦を一枚ずつ外し、再利用できる瓦と交換が必要な瓦を仕分けます。いぶし瓦は割らないよう慎重に扱います。 - 根っこと傷んだ葺き土の撤去
木の根を一本残らず取り除きます。湿って崩れた葺き土や雑草の根も、すべて撤去してきれいにします。 - 下地の確認
棟の下の地瓦や、見える範囲の下地に傷みがないかを確認します。根が入り込んでいた部分は特に念入りに見ます。 - 屋根用漆喰で土台づくり
葺き土の代わりに、水に強い屋根用漆喰(南蛮漆喰)を使って棟の土台を作ります。雨水を吸いにくく、種が根付きにくい棟になります。 - のし瓦・冠瓦を積み直し、しっかり緊結
瓦を一段ずつ積み直し、線で確実に固定して、台風の強風にも負けない棟に仕上げます。 - 写真でご報告
解体時の根っこや葺き土の状態、完成後の様子を写真でお見せしながらご説明します。
化粧棟の撤去部分も、撤去後に雨水がきちんと流れるよう屋根面を整えて納めます。
【基礎知識】棟の構造と、葺き土が植物を育ててしまう仕組み
ここからは少し専門的なお話です。棟の仕組みを知っておくと、なぜ植物が生えるのか、なぜ積み替えが必要なのかがよりわかりやすくなります。
棟は「土台+のし瓦+冠瓦」の積み重ね
日本瓦の棟は、葺き土(または漆喰)を土台にして、平たいのし瓦を何段か積み重ね、一番上に丸い冠瓦をかぶせた構造になっています。表面に見える白い漆喰は、中の葺き土を雨から守る「フタ」の役目をしています。
年数が経つと、この漆喰が痩せたり剥がれたりして、雨水が葺き土に入り込むようになります。昔の葺き土は文字通り「土」ですから、水と種さえあれば、植物が育つ条件がそろってしまうのです。
棟の種類と役割
| 棟の名前 | 場所 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 大棟 | 屋根の一番高い水平部分 | 屋根面同士の合わせ目を雨から守る |
| 下り棟 | 大棟から軒先へ下る棟(切妻ではケラバ側) | 屋根の端・ケラバまわりの雨仕舞いと強風対策 |
| 化粧棟 | 屋根面の途中など | 主に外観を整える装飾的な役割 |
屋根は「一次防水」と「二次防水」の二重構造
瓦屋根は、表面の瓦や棟が雨のほとんどを受け流す一次防水と、瓦の下の防水シートが入り込んだ水を軒先へ逃がす二次防水の二段構えです。棟の葺き土が崩れて水が入りやすくなると、二次防水にかかる負担が大きくなります。築年数が経った屋根ほど、一次防水である棟を健全に保つことが大切です。
いぶし瓦は「瓦は長持ち、棟は手入れが必要」
いぶし瓦は、焼き上げの最後に燻(いぶ)すことで表面に炭素の膜をつくった瓦です。あの独特の銀色はこの膜によるもので、瓦そのものは50年、60年と使い続けられる耐久性があります。
ただし、瓦が長持ちでも棟の土台である葺き土や漆喰は消耗品です。だからこそ、いぶし瓦の屋根は「全部やり替える」のではなく、傷んだ棟を積み替えて瓦を活かし続けるという直し方が向いています。
地上からできるセルフチェック
築30年以上の瓦屋根のお宅は、次の点を確認してみてください。特に北側の屋根は要注意です。
- ☐ 棟の上や隙間に、草や小さな木が見える
- ☐ 棟の一部が緑色っぽい(コケが付いている)
- ☐ 棟の白い漆喰が剥がれている、黒ずんでいる
- ☐ 棟のラインがまっすぐでなく、波打って見える
- ☐ 屋根の下や雨樋に、土や漆喰のかけらが落ちている
- ☐ 近くに木や林があり、鳥がよく屋根にとまっている
⚠️ 屋根には絶対に上がらないでください
棟まわりはコケや草で滑りやすく、葺き土が崩れていると瓦が動くこともあり、転落の危険があります。また、植物をご自分で引き抜くと、根と一緒に葺き土や瓦がずれてしまうこともあります。確認は地上や2階の窓から、スマホのズームや双眼鏡で見える範囲にとどめてください。
ひとつでも当てはまれば、棟の中で葺き土が傷み始めているサインかもしれません。
よくあるご質問
Q. 屋根に生えた木は、自分で引き抜いてもいいですか?
A. おすすめしません。屋根の上は危険なうえ、根が棟の奥まで張っていると、引き抜いた拍子にのし瓦や葺き土まで崩れてしまうことがあります。そこから雨水が入りやすくなるので、かえって症状を悪化させてしまいかねません。
Q. 除草剤ではダメですか?
A. 一時的に枯らすことはできますが、湿った葺き土という「生えやすい環境」は残るので、また種が入れば同じことの繰り返しになります。枯れた根が残ればすき間の原因にもなります。根本的に解決したいなら、棟の積み替えが確実です。
Q. 化粧棟を撤去しても大丈夫なのですか?
A. 化粧棟は主に外観のための棟なので、撤去後に屋根面をきちんと納めれば雨仕舞いの面では問題ありません。ただ、建物の形や屋根の納まりによって判断は変わりますので、必ず現地で確認したうえでご提案します。見た目の変化も含めて、事前にしっかりご説明します。
Q. 今のいぶし瓦は使えますか?
A. 割れや欠けがなければ、できる限り再利用します。今回の屋根も、瓦自体はまだまだ使える状態でした。足りない分や傷んだ瓦は、色合いが近いものを選んで補います。
Q. 雨漏りしていなくても工事が必要ですか?
A. 雨漏りしていない今が、一番負担の少ないタイミングです。雨漏りが始まってからでは、防水シートや下地まで傷んでいることが多く、工事の範囲が広がりがちです。もちろん、点検の結果すぐに工事が必要なければ、正直にそうお伝えします。必要のない工事をおすすめすることはありません。
まとめ・無料点検のご案内
- 「屋根から木が生えている」とのご相談で、高知市・築約50年・切妻・高知県産いぶし瓦の屋根を調査
- 下り棟から木が生え、根は棟の下の方まで伸びていた。根を取るには下り棟の一時撤去が必要
- 隣の化粧棟にも雑草。どちらも日が当たりにくい北側で、葺き土が乾きにくいことが原因
- 木を切るだけでは、根が残る・空洞ができる・湿った環境はそのままで再発や雨漏りのリスクが残る
- 化粧棟は全撤去でリスクのある場所を減らし、下り棟は積み替えで根から直すことをご提案
屋根から生えた木や草は、「見た目がちょっと気になる」程度に思われがちです。でも実際には、棟の中が湿って傷んでいることを知らせてくれるサインです。いぶし瓦は長持ちする瓦だからこそ、棟をきちんと直してあげれば、この先も長くお住まいを守ってくれます。
村山瓦では、屋根の点検を無料で行っています。点検結果は写真をお見せしながらご説明しますので、「うちの屋根にも何か生えている気がする」「北側の棟が気になる」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
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