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棟瓦危機一髪

  • 屋根リフォームの基礎知識
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棟瓦が落ちかかっていた現場から見えた「葺き土のやせ」と「塗装された桟瓦」の危険サイン

今日の現場:「棟瓦が落ちかかっている」というご相談

本日伺ったのは、「棟の瓦が落ちかかっているようで心配」というお問い合わせをいただいたお宅でした。実際に地上から見上げてみると、たしかに大棟(屋根の一番高いところにある棟)の瓦が少し波打つように見え、ズレているような気配があります。

こういうご相談は決して珍しいものではなく、私たちが日々現場を回っているなかでも頻繁に出会います。ただ、地上から見た「なんとなく変」という印象と、実際に屋根に上がって確認する状態には、かなり差があることも多いんです。今回もまさにそのケースで、見た目以上に内部の劣化が進んでいました。

屋根に上がって分かったこと(調査報告)

調査のため実際に屋根に上がらせていただくと、棟瓦のズレの原因は内部の葺き土(ふきつち)が痩せて空洞化していたことでした。棟瓦は本来、この葺き土がしっかり詰まっていることで固定され、雨風にも耐えられる構造になっています。ところが、長年の雨水の影響で土がやせ細り、瓦を支える力を失っていたのです。

さらに気になったのが、屋根の平らな面に使われている桟瓦(さんがわら)でした。この瓦はセメント系の瓦ではなく、本来塗装のいらない粘土系の瓦だったのですが、なぜか表面が塗装されていました。見た目はきれいに整っているように見えるのですが、専門的な視点で見ると、これは屋根にとってあまり良い状態とは言えません。理由は次の章で詳しくお伝えします。

これらの状態を踏まえ、私たちはお客様に「葺き替え工事」をご提案させていただきました。

なぜ葺き土は「痩せる」のか?(専門解説)

昔ながらの瓦屋根の多くは「土葺き工法」と呼ばれる方法で施工されています。これは棟瓦や桟瓦の下に葺き土を敷き詰め、瓦を固定・安定させる伝統的な工法です。この葺き土を風雨から守っているのが漆喰(しっくい)で、通常セットで機能しています。

しかし、漆喰は紫外線や雨風の影響を受け続けることで、10〜20年ほどで硬化やひび割れが進みます。漆喰が劣化して隙間ができると、そこから雨水が浸入し、内部の葺き土が少しずつ流れ出したり乾燥と湿潤を繰り返すことで痩せ細っていきます。土がやせると内部に空洞ができ、瓦を固定する力そのものが失われてしまうのです。

さらに土がやせると、棟瓦を結束している銅線にも負担がかかり、緩みや断線につながるケースもあります。「漆喰の劣化 → 葺き土のやせ・流出 → 固定力の低下 → 棟瓦のズレ・落下」という流れは、瓦屋根の劣化として非常によく見られるパターンです。今回の現場もまさにこの典型例でした。

セメント系でもないのに塗装された桟瓦の落とし穴

屋根の瓦には大きく分けて「粘土系の瓦(陶器瓦・いぶし瓦など)」と「セメント系の瓦(セメント瓦・モニエル瓦など)」があります。この違いは、メンテナンスの方法を左右する重要なポイントです。

セメント系の瓦は表面を塗料でコーティングして防水性を保っているため、塗膜が劣化すれば定期的な塗り替えが必要です。一方、粘土系の瓦は高温で焼き上げた際に表面がガラス質になっていたり、釉薬でコーティングされていたりするため、瓦自体が水を吸いにくく、本来は塗装によるメンテナンスを必要としません。

今回の現場の桟瓦は、この粘土系の瓦でした。にもかかわらず表面が塗装されていたのです。粘土瓦はわずかに湿気を吸ったり吐いたりする性質を持っているとも言われており、そこに塗膜でフタをしてしまうと、瓦本来の呼吸や防水のメカニズムがうまく働かなくなることがあります。また瓦同士の重なり部分に塗料が入り込むと、隙間をふさいでしまい、かえって雨水の逃げ道をなくしてしまうケースも見られます。実際に私たちの現場でも「塗装で瓦同士がくっついてしまい、そこから雨漏りしていた」という事例に遭遇したことがあります。

つまり、見た目をきれいにするための塗装が、結果として屋根の防水性能を発揮できない状態を作ってしまっていたわけです。これは今回の棟瓦のズレとあわせて、屋根全体の防水機能に不安が残る状態だと判断した理由のひとつです。

今回ご提案した「葺き替え工事」について

今回のように、①棟瓦を支える葺き土がやせて内部が空洞化している、②本来不要な塗装によって桟瓦の防水性能が発揮できていない、という2つの問題が重なっている場合、部分的な補修だけでは根本解決になりにくいと考えられます。

葺き替え工事は、既存の瓦や葺き土をすべて撤去し、下地の野地板や防水紙(ルーフィング)まで新しくしたうえで、瓦を積み直す工事です。表面上のズレを直すだけでなく、屋根内部からしっかり防水性能を作り直せるため、雨漏りリスクの根本改善につながります。あわせて、瓦を固定する葺き土は劣化しにくい南蛮漆喰などの高耐久な材料に置き換えることで、今後のメンテナンス負担も軽減できます。

費用面では、部分補修に比べると工事範囲が広がる分、どうしても金額は上がります。ただし、小さな補修を繰り返すよりも、長期的に見れば安心感とコストバランスの両方で納得いただけるケースが多いというのが、現場を長く見てきた実感です。

このまま放置するとどうなるか

「瓦が少しズレているだけ」「見た目はそこまで悪くない」と、応急的な対応だけで済ませてしまう方も少なくありません。しかし、葺き土のやせや不適切な塗装を放置すると、以下のようなリスクが考えられます。

  • 強風や地震の揺れをきっかけに、棟瓦がさらにズレたり、落下したりする危険性
  • すきま・空洞から雨水が入り込み、野地板や垂木など建物の構造部分が腐食していく可能性
  • 雨漏りが表面化した頃には、下地の傷みが進行しており、結果的に工事範囲・費用が大きくなってしまうケース

屋根の異変は「わかりやすいサイン」であることも多いですが、今回のように地上からは軽微に見えても、屋根に上がってみると内部はかなり進行しているということも珍しくありません。棟の様子や瓦の表面に少しでも気になる点があれば、早めの点検をおすすめします。

まとめ|屋根の異変は「早めの点検」がいちばんの近道

今回の現場では、棟瓦のズレの裏に葺き土のやせと、本来不要な桟瓦への塗装という2つの要因が重なっていました。どちらも屋根の上からでないと分かりにくい劣化ですが、放置すると雨漏りや建物内部の腐食につながる可能性があります。

私たち村山瓦は、高知市を中心に地域密着で70年以上、屋根一筋で工事を行ってきました。屋根工事の専門資格である「瓦屋根診断技士」を持つ職人が、屋根の状態をしっかり調査したうえで、必要な工事内容を分かりやすくご提案いたします。棟の様子や瓦の状態が気になる方は、無料点検からお気軽にご相談ください。