棟瓦の凍害
- 代表村山の現場ブログ
現場ブログ|棟瓦の劣化と積み替え工事
大豊町で棟瓦が波打っていた話。原因は「淡路瓦の凍害」でした
高知県内でも山あいにあたる大豊町(おおとよちょう)で、 「棟(むね)の瓦が傷んでいるので見てほしい」というご相談をいただきました。 現地で屋根に上がって調べてみると、原因は棟瓦の凍害(とうがい)。 なぜ凍害が起きたのか、そしてなぜ三州瓦への積み替えをおすすめしたのか、 現場での気づきと合わせて解説します。
大豊町の現場で見た「波打つ棟瓦」
ご依頼をいただいたのは、高知市中心部から車で1時間ほど山間部に入った大豊町のお住まいです。 お客様からのご相談内容は「屋根の一番高いところの瓦(棟)が何だか波打って見える、 触ると瓦がグラグラする気がする」というものでした。
実際に梯子をかけて屋根に上がらせていただくと、遠目に見た時よりも状態は進んでいました。 棟瓦の表面がボロボロと剥がれるように欠けており、指で押すとパラパラと崩れる箇所もあります。 台風や地震で瓦がズレたのではなく、瓦そのものが内側から傷んでいる、という独特の壊れ方でした。 長年現場に出ていると「これはよくある割れ方や欠け方とは違うな」という感覚がすぐに働きます。 この「瓦自体がボロボロと崩れるように傷む」という壊れ方こそ、今回の記事の主役である 凍害のサインでした。
調査してわかったこと|棟瓦が凍害を起こしていた
屋根の刻印や瓦の風合いを確認したところ、この棟瓦は淡路産の瓦であることがわかりました。 淡路瓦は瓦の三大産地のひとつで、いぶし瓦の美しい銀色の風合いや意匠性の高さで知られる 伝統ある瓦です。デザイン性や質感では非常に評価の高い瓦ですが、 今回のお宅で使われていた当時の淡路瓦は、現在の製品と比べて焼成温度が低い時代に 作られたものでした。
焼成温度が低い瓦は、瓦の内部にわずかな隙間(吸水しやすい組織)が残りやすくなります。 そこに雨水がしみ込み、冬場に凍結と融解を繰り返すことで瓦の内部から崩れていく。 これが今回、大豊町の棟瓦に起きていた凍害の正体です。

そもそも「凍害」とは何か
凍害とは、瓦や漆喰(しっくい)、コンクリートなど水を含みやすい建材が、 内部にしみ込んだ水分の凍結・融解を繰り返すことでひび割れや欠損を起こす現象です。 仕組みはシンプルで、水は凍ると体積が膨張する性質を持っています。 建材の内部で水が氷になるたびにわずかに膨張し、それを繰り返すうちに 建材内部から目に見えないひびが広がっていき、やがて表面がポロポロと剥がれ落ちるように 崩れていきます。
屋根材以外でも、寒冷地の道路のひび割れや、冬場に外壁のモルタルが欠けてしまう現象なども 同じ原理で起こることがあり、建築業界全体で古くから知られている劣化現象のひとつです。
なぜ大豊町では凍害が起きやすいのか
大豊町は高知県の中でも北部の山間部に位置し、冬になると平野部の高知市内とは 比べものにならないほど冷え込み、積雪が見られる年もある地域です。 標高が高くなるほど気温差も大きくなり、日中溶けた雪や霜が夜間に凍りつく、 という凍結と融解のサイクルが冬の間に何度も繰り返されます。
つまり、瓦にとって「凍害が起きやすい条件」がそろっているのが大豊町のような 山間部の気候です。同じ淡路瓦を使っていても、高知市内の平野部であれば これほど早く傷まないケースもありますが、寒暖差と凍結回数が多い地域では、 焼成温度の低い瓦は本来の寿命よりも早く傷んでしまうことがあります。 現場に出ていると、「同じ瓦でも設置されている地域によって傷み方がまったく違う」 ということを実感する場面が多くあります。
淡路瓦・石州瓦・三州瓦の違いと、今回三州瓦を選んだ理由
日本瓦には大きく分けて「淡路瓦(兵庫県)」「石州瓦(島根県)」「三州瓦(愛知県)」の 三大産地があり、それぞれ原料の粘土質や焼成方法、得意とする気候条件が異なります。 淡路瓦は美しいいぶし銀の質感、石州瓦は寒冷地や沿岸部での耐久性、三州瓦は 高い焼成温度による強度と種類の豊富さに強みがあるとされています。
| 産地 | 主な特徴 | 寒冷地・凍害への相性 |
|---|---|---|
| 淡路瓦(兵庫県) | いぶし瓦の美しい風合い、意匠性の高さ | 製造時期・製法によっては吸水率が高くなりやすい |
| 石州瓦(島根県) | 高温焼成による硬さ、耐塩害性 | 寒冷地・沿岸部での実績が豊富 |
| 三州瓦(愛知県) | 高温焼成、釉薬瓦の種類の豊富さ、流通量が多い | 吸水率が低く、寒暖差のある地域でも扱いやすい |
今回の現場では、淡路瓦をそのまま同じ仕様で積み直す方法もご提案できましたが、 大豊町の気候条件(寒暖差が大きく、積雪もある)を踏まえると、 また同じように凍害を繰り返してしまうリスクが高いと判断しました。 そこで、焼成温度が高く吸水率を抑えられる三州瓦を使った 棟瓦の積み替え工事をご提案し、お客様にもご納得いただいた上で工事を進めさせていただきました。
どの瓦にも良し悪しがあるわけではなく、大切なのは「その地域の気候に合った瓦を選ぶこと」です。 同じ高知県内でも、高知市中心部と大豊町のような山間部とでは求められる性能が異なる、 という点は現場でお客様にも必ずお伝えしている内容です。
棟瓦の積み替え工事、当日の流れ
棟瓦の積み替え工事は、大きく分けて次のような工程で進めます。
- 既存の棟瓦・漆喰の撤去
傷んだ棟瓦を丁寧に取り外し、内部の葺き土や漆喰の状態を確認します。 葺き土がボロボロになっているケースも多く、あわせて状態をチェックします。 - 下地の補修
葺き土や芯材に傷みがあれば整え直し、新しい棟をしっかりと支えられる状態に整えます。 - 新しい棟瓦(三州瓦)の積み直し
雨水に強い屋根用の漆喰を使いながら、三州瓦を一段ずつ丁寧に積み上げていきます。 - 仕上げ・最終チェック
棟の通りやズレがないかを確認し、雨仕舞(あまじまい)に問題がないかを最終確認して完了です。
積み替え工事は瓦を交換するだけでなく、内部の葺き土や漆喰の状態まで一度リセットできるため、 表面的な補修と比べて雨漏りや棟崩れの再発リスクを抑えやすい工事です。
こんな症状があれば要注意|ご自宅でのセルフチェック
屋根の上に自分で登るのは大変危険ですので絶対に避けていただきたいのですが、 地上や2階の窓などから見える範囲でも、次のような症状がないか確認してみてください。
- 棟の瓦の表面がザラザラ、ボロボロと崩れているように見える
- 棟のラインが波打っている、一部だけ盛り上がって見える
- 漆喰が黒ずんでいる、欠けている、剥がれ落ちている
- 棟の周りに雑草やコケが生えている
- 大雪や霜が降りた冬のあと、瓦の様子が変わった気がする
特に山間部や積雪のある地域にお住まいの方は、冬を越すたびに少しずつ症状が進んでいる ケースが多いため、「去年より今年の方が傷みが進んでいる気がする」と感じたら、 早めに専門業者へ点検を依頼することをおすすめします。
まとめ
今回の大豊町の現場は、「同じ日本瓦でも、産地や焼成温度によって地域との相性がある」 ということを改めて実感させられる工事でした。淡路瓦そのものが悪いわけではなく、 寒暖差が大きく積雪もある山間部という環境に対して、当時の焼成技術ではやや荷が重かった、 というのが実際のところです。だからこそ、屋根の状態だけでなく 「その土地の気候にどんな瓦が合うのか」まで含めてご提案することを、 私たちは大切にしています。
棟瓦のボロボロとした崩れ、波打ち、漆喰の剥がれなど、気になる症状がありましたら、 無理に自己判断せず、まずはお気軽にご相談ください。
棟瓦の状態が気になる方は、まずは無料相談を
村山瓦は高知県高知市を拠点に、大豊町を含む県内エリアの屋根リフォーム・瓦修理に 対応しております。棟瓦の凍害や雑草、漆喰の剥がれなど、気になる症状がありましたら お気軽にお問い合わせください。




